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ばあちゃんと私の物語

9年前から孫一人でおばあちゃんの在宅介護をしています。幼い頃からおばあちゃん子で育ってきた私にとって、人生で一番感謝しているのはばあちゃん。今度は私が面倒をみる番だと思って恩返ししているところです。これまでの9年間を振り返り、祖母の変化や介護を通じて経験したこと、孫が介護しているからこそ出会えた人たち、考えられないようなうれしいできごとについてまとめてみました。よろしければお読みください。

【第22話】ばあちゃんの感情を感じるとき

言葉も発せず、寝たきりになってしまったばあちゃん。
けれども、私にはばあちゃんの感情が伝わってきます。

まず耳かきが嫌い。
耳かきをしていると、目はつぶっているのにまぶたの奥で目がギョロッと動いて
私のほうを見たり、アヒルみたいな口をしたりするんです(笑)。
アヒル口は私が秋田に帰ってばあちゃんの面倒をみるようになってから。
もともと穏やかなばあちゃんなので、そういう顔は見たことがなく、新しい発見でした。
今もアヒル口を見ると、これはやってほしくないんだなと思います。
あとは、気に入らないことをされると顔をそむけたり、眉間にシワが寄って、
眉が八の字になったりします。

反対に気持ちいいとか、うれしいときはふわっとやさしい顔つきになって、
なんでもやらせてくれます。
耳は聞こえているので、「あったかいタオルで顔拭くよ~」「お腹の音聞くから
ちょっと冷たいよ~」と声をかけると、「アーーー」と声を出して応えてくれるし、
「お口のお掃除するよ、アーンして」と言うと、口を開けようとしてくれる。

私が買い物や用事で外出するときにお願いしている家政婦の夏井さんによれば、
普段は目を閉じているのに、私が帰る時間が近づくと目を開けてパチパチさせたり、
キョロキョロ動かしたりするそうです。
そうすると本当に5分か10分で玄関が開くので、「いつもびっくりするのよ」と
言ってくれます。
「私が話しかけても反応しないのに、せこちゃんの声には反応するから憎らしい」と
言われると、ちょっとうれしいです。

毎晩、そんなばあちゃんの耳元で、「せこちゃんのばあちゃんでいてくれてありがとう。
ばあちゃんがいなくなったら、せこちゃん一人ぼっちになっちゃうから長生きしてね」と、
寝る前におまじないのように声をかけています。

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