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ばあちゃんと私の物語

9年前から孫一人でおばあちゃんの在宅介護をしています。幼い頃からおばあちゃん子で育ってきた私にとって、人生で一番感謝しているのはばあちゃん。今度は私が面倒をみる番だと思って恩返ししているところです。これまでの9年間を振り返り、祖母の変化や介護を通じて経験したこと、孫が介護しているからこそ出会えた人たち、考えられないようなうれしいできごとについてまとめてみました。よろしければお読みください。

【第16話】ばあちゃんはお金が大好き⁉

お茶目なばあちゃんの様子もちょっとご紹介しようと思います。
病気をしてからの一時期、ばあちゃんはよくお金の心配をしていました。
「せこちゃん、せこちゃん、お金ある?」と聞かれ、看護師さんがくると
「せこちゃん、お金なんぼかかるん?」と聞かれました。
おしっこの管を交換するたびに、それがいくらかかるのかいつも心配していました。

そこでお財布の中に千円札を5枚ぐらい入れて首からぶら下げ、
肌身離さず持たせることにしました。
すると毎朝、「父さんに千円、母さんに千円、せこちゃんに千円」って、千円ずつくれる
毎朝の儀式が始まりました。
「うわぁ~うれしい! ばあちゃん、ありがとう」と言うと、
あげたことに満足するのか、あげたお金を回収して財布に戻す。
そんなことを毎日繰り返していました。

叔父の話では昔はやりくりが大変で、子どもだった叔父に「お父さんががんばって働いて
くれるから家族が暮らしていける。今日は米がいくらで、大根は1本何円だった」と、
細かく話して聞かせたそうです。当時のことがふとよみがえるのでしょうか?

ある日、朝起きてばあちゃんを見たら千円札をくわえていたことがあって、
これには私も大笑いしてしまいました。
叔父が帰郷し、お小遣いをもらうと、ばあちゃんはうれしそうな顔をして微笑み、
息子からもらった小遣いがよっぽどうれしかったんでしょう、
財布に入れて、右手で大事そうに押さえていました。
「ばあちゃん、ばあちゃん、せこちゃんと山分けしよう」と冗談で言うと、
ちゃんと私にも千円分けてくれる、そんな優しいばあちゃんでした。

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