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ばあちゃんと私の物語

9年前から孫一人でおばあちゃんの在宅介護をしています。幼い頃からおばあちゃん子で育ってきた私にとって、人生で一番感謝しているのはばあちゃん。今度は私が面倒をみる番だと思って恩返ししているところです。これまでの9年間を振り返り、祖母の変化や介護を通じて経験したこと、孫が介護しているからこそ出会えた人たち、考えられないようなうれしいできごとについてまとめてみました。よろしければお読みください。

【第11話】事件勃発! 徘徊、民謡、いきなり裸…!?

昼間は天気がよければばあちゃんを連れてゆっくり家のまわりの畑を散歩するような
おだやかな毎日でしたが、あるとき、ひどい徘徊が始まりました。
私はいつもばあちゃんのベッドの隣で寝ていたのですが、
夜中に私の横でガサガサ物音が聞こえるので目を開けてみると、
ばあちゃんが突然ベッドの柵を越え、おしっこのバッグをひきずったまま
目の前に立っているではありませんか‼
そのまま廊下に出て行こうとするので、びっくりして飛び起きました。
それからは私がうっかり寝ていても勝手に出て行かないように、
ドアにクマよけの大きな鈴をつけたり、部屋の扉にカギをつけたり、
ケアマネージャーさんに相談して、
踏むとブザーが鳴るマットをベッドの下に置いたりしました。

それでも夜中の徘徊は止まらず、ばあちゃんが「歩きたい」と言うので、
とにかくばあちゃんの気がすむまで二人で廊下を行ったり来たりして、
明け方ようやくベッドに一緒に横になり、
抱きかかえるようにして背中をトントンたたいて落ち着かせる日が続きました。
そのことを知らない父が朝起こしにきてくれ、2人が狭いベッドで寝ている姿を見て
「何してるんだあ⁉」なんて言われたこともありました(笑)。

夜だけでなく、日中はダイニングテーブルと冷蔵庫と居間に置いてある車いすを
三角形にグルグル回り続けました。
冷蔵庫の前に立ち、「コーヒーが飲みたい」と言うのでコーヒーを淹れ、
ダイニングテーブルに座って飲み、飲んだかと思えば車いすに。それが3カ月も!
私自身、睡眠不足と連日の徘徊でさすがに気が変になりそうでしたが、
ここで怒ったり強制したりすれば、ばあちゃんが委縮してしまい、逆効果です。

実は入院中、夜中に病棟内を徘徊するおばあさんに、
深夜勤の看護師さんが「○○さん、私と一緒に歩きましょう」とやさしく声をかけ、
笑顔で寄り添う光景を目にしました。
すると、しばらくしてそのおばあさんの徘徊がおさまったんです。
相手を尊重し、やさしく笑顔で声をかけてあげる。とても大切なことだなと思いました。
私もばあちゃんのしたいように一緒に歩き、安心できるように声をかけ、
ばあちゃんが居眠りしたときは、また歩き出そうとしたときすぐ気がつくように手を握り、
一緒に居眠りすることにしました。

ほかにも、夜中に起きて急に裸になったり、
ベッドに横になってから2時間も3時間も壊れたラジオのように同じ歌を歌ったり… 。
そのおかげで、秋田県民歌を覚えたくらいです(笑)。
徘徊する時期はなぜか季節の変わり目が一番ひどく、ばあちゃんは目つきがギラギラして
ちょっと興奮しているように見えました。
その後も3年間は季節の変わり目になると同じような徘徊が始まり、
嫁ぐ前の旧姓を言って、「おうちに帰りたい」なんて言ったりしていましたね。

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