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ばあちゃんと私の物語

9年前から孫一人でおばあちゃんの在宅介護をしています。幼い頃からおばあちゃん子で育ってきた私にとって、人生で一番感謝しているのはばあちゃん。今度は私が面倒をみる番だと思って恩返ししているところです。これまでの9年間を振り返り、祖母の変化や介護を通じて経験したこと、孫が介護しているからこそ出会えた人たち、考えられないようなうれしいできごとについてまとめてみました。よろしければお読みください。

【第10話】「食べたつもり」でも「おいしい!」

ばあちゃんは約1年ぶりに家に帰ることができ、父、母、ばあちゃん、私、
4人の生活がスタートしました。

問題は食事です。
お医者さんからは、「食事は誤嚥性肺炎になるリスクが高い」
と言われていましたが、ダイニングテーブルで家族が揃ってご飯を食べるのに、
ばあちゃん一人だけ食べないのは心が痛み、
ヨーグルト、プリン、ゼリーのほか、ばあちゃんの大好きだった
バナナをすりつぶしたものなど、3 、4品を用意することにしました。
初めての食事では、ばあちゃんの右側に父が、左側に私が、向かい側に母が座り、
家族が見守る中、ばあちゃんは自分でスプーンを使って上手に口元まで持っていくものの、
本人も飲み込めないのをわかっているのか、そのまま目の前のゴミ箱にポイッと。
いったん口に入れてもきれいに出してくれて、食べるまねごとをしていました。
本人は食べているつもりだったのでしょうが(笑)、横から見ていた父が
「もったいないからがんばって飲み込んでみて」なんて言っていたのを思い出します。

「ばあちゃん、おいしい?」と聞くと、
本当にいい顔をして、「おいしい」と答えるばあちゃん。
食べ終わるとばあちゃんの手はベタベタ。
その手をきれいに拭くのが父の仕事でした。
毎晩、晩酌する父のコップにビールを注いでくれようとするばあちゃん。
そんな毎日を過ごすことが家族とのコミュニケーションであり、
小さな幸せだったと思います。

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