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ばあちゃんと私の物語

9年間、孫が一人でおばあちゃんを在宅介護してきたあゆみを30話の物語にし、『孫の手』としてまとめたところ、読んでくださった多くの方から「感動しました!」「がんばってね!」と励ましのお言葉をいただきました。人から人へ手渡され、今では『孫の手』が看護学校の図書館や介護施設、認知症カフェなどにも置かれるようになり、反響の大きさを感じています。最近になって「物語のつづきはまだ?」と聞かれることが増え、思い切って、また筆をとることになりました。よろしければお読みください。

【第31話】ばあちゃんの主治医S先生

ばあちゃんの主治医である脳外科医S先生との最初の出会いは、
今から26年前にさかのぼります。
当時60歳だったばあちゃんは、目まいや吐き気を訴え、父に連れられて病院へ。
そのとき脳の腫瘍を見つけてくださったのがS先生です。
「生まれつき持っていたものか、後天性かわからないが、
悪性ではないからそのまま様子を見ていきましょう」との診断でした。
突然、自分の脳に腫瘍があると告げられたばあちゃんは、
「先生、私は70歳までは生きたいと思うけど、生きられますか?」と聞いていたそうです。
その後、年に数回、体調を崩したものの無事に70歳を超え、
その間はS先生にお会いすることもありませんでした。

ところが、76歳で水頭症を発症。
手術を受けた別の病院で重い後遺症を引き起こし、
何のご縁か、再びS先生のいらっしゃる病院へ転院することになったのです。
それから10年、ばあちゃんはずっとS先生にお世話になっています。
長いお付き合いのおかげか、
寝たきりのばあちゃんを病院へ連れていくのが困難な悪天候の日などは、
私一人で定期診察を受診することもあり
「ばあちゃん、変わりないか?」
「変わりないです」と話をしながら、次回の予約をしてもらいます。
今ではばあちゃんの話より余計な話のほうが多くなり、つい先日も
「この間見た『〇〇〇』って韓国映画の女優さんがきれいでビックリしたよ」とか、
「せっかくイ・ビョンホンに会うためにやせたのに、また太ったか?
だからいつも恋愛しろって言ってるだろ。大恋愛すればやせるんだから」とか、
冗談を言いながら私のことを心配してくれて、まるでお父さんみたいです。
「何か困ったら、必ず言ってこいよ」
そう言ってくださるひと言が、心の支えになっています。
こんな心強い味方が近くにいると思うだけでがんばれる。
先生のお顔を見ると、私もホッとします。

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