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孫の「手」介護

ひと言で「寝たきり」といっても、一人ひとり体の状態は違います。私のおばあちゃんは胃ろうから腸ろうに切り替え、1日3回の流動食をとっていて、着替えはもちろん、排せつ、寝返り、すべて介助が必要です。目もほぼ閉じたままで会話はできません。必ずしも、みなさんに役立つ情報ではないかもしれませんが、あくまで「うちのばあちゃんの場合」ということで、介護のポイントや朝から晩までの介護の流れを紹介します。

あらかじめ買っておくと安心なもの

  • 酸素濃度測定器

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  • 痰の吸引器

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  • 聴診器

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ほかにもこんなものを用意するといい

酸素濃度測定器を買った理由

7年半ほど前のこと。朝、いくら呼びかけてもばあちゃんの反応がなく、あわてて救急車を呼びました。救急隊員さんが酸素濃度をはかると、数値がとても低かった。どうやら痰がつまって酸素が取り込めなくなっていたようです。救急車のなかで、鼻から酸素を入れるとすぐに意識は回復しましたが、それまではこちらのほうが生きた心地がしませんでした。

そのまましばらく入院した際、看護師さんとも相談して
「自宅に酸素濃度測定器があったほうがいいね」ということ
になり、痰の吸引器とセットで購入しました。

血中酸素濃度の正常値は90~95%

うちでは毎朝、酸素濃度をはかっていますが、ばあちゃんの場合、酸素濃度が90%を切ると痰が絡んでいる合図。すぐに吸引器で痰をきれいに吸い取ります。すると、酸素濃度もあっという間に正常値に戻るので、目で確認できて安心です。
酸素濃度測定器は、濃度と脈拍さえわかれば安いものでいいと思います。私は訪問看護師さんにお願いして購入しました。値段は3万円弱くらいだったと思います。

痰の吸引器を買った理由

「酸素濃度測定器を買った理由」でも書いたように、酸素濃度測定器と痰の吸引器はセットで購入しました。
最初はやはり怖かったです。看護師さんに教えてもらってもなかなかコツがつかめず、鼻の粘膜を傷つけて鼻血を出したり、のど仏に当たったり。でも、回数をこなすうち、耳と勘を頼りにうまく吸引できるようになりました。ばあちゃんの体の形状に慣れてきたのかもしれません(笑)。管はまっすぐ入れるより、先をクルクル回転させながら入れてあげると、痰の吸い付きがいいように感じます。
今は、寝る前に吸引するようになったせいか、夜中に何度も
せき込むことがなくなり、吸引の回数もずいぶん減って楽になりました。

そのまましばらく入院した際、看護師さんとも相談して
「自宅に酸素濃度測定器があったほうがいいね」ということになり、
痰の吸引器とセットで購入しました。

すぐ使えるようにしておくことが大事

吸引器はつねにベッドサイドに準備しています。いつでも使えるよう、容器に水を張り、哺乳瓶を消毒する液(私はミルトンを使っています)を2滴入れて、管を浸けっぱなしにしておきます。管のサイズは病院で使うものより細いほうが便利だと思います。口から取りにくいときは鼻から取るなど、細いほうが応用がききますから。管は一週間に1回、新しいものと交換しています。
値段は4万円弱くらいで、これも訪問看護師さんにお願いして購入しました。管の交換も含めるとコストはそれなりにかかりますが、在宅で介護する以上、この出費は仕方ないと思っています。

聴診器を買った理由

2年前に腸閉そくを起こして入院したとき、病院で一日何度も看護師さんがばあちゃんのお腹の音を聴きにきて、腸が正常に動いているか確認していたのを見て、私も「家で使おう」と買うことにしました。インターネットで探して、2,000円ぐらいだったと思います。

そのまましばらく入院した際、看護師さんとも相談して
「自宅に酸素濃度測定器があったほうがいいね」ということになり、
痰の吸引器とセットで購入しました。

お腹の音を聴いてケアを判断する

ばあちゃんはもともと便秘症のうえに、年齢とともに腸の動きが弱くなっています。流動食のあと、聴診器を当てても、音がまったく聞こえないこともあります。
そういうときは、お腹をマッサージします。腸の曲がっているところに便がたまりやすいので、お腹の両脇をやさしく刺激するようにもみ、次にお腹全体を「の」の字を描くように10分ぐらいゆっくりマッサージしたあと、再び聴診器で聴くと、腸がグルグル動きだしたのがわかります。

ほかにもこんなものを用意するといい

  • 良い香りのするボディークリーム
  • マニキュア
  • 明るい色の服

ばあちゃんを人気者にしたアイテム

良い香りのするボディークリーム

皮膚の乾燥を防ぐため、お風呂上がりにはいつもボディクリームを塗っています。
たまたま海外のお土産でいただいたボディクリームを塗ってみたところ、ばあちゃんが甘い香りに包まれて、二人ともとても幸せな気持ちになりました。
入院中は、看護師さんたちが「ここのお部屋いい香りがする~」と言いながら入ってきます。デイサービスを利用しているときも、職員さんが「いい香りがする~」と言いながらばあちゃんのまわりをクンクンしていました(笑)。
介護にはにおいの悩みがつきものですが、いい香りのボディクリームを使ってみるのもひとつの方法だと思います。
入院した際、個室であれば、アロマポットやディフューザー(香りを部屋に拡散させる器具)などを持ち込むのもおすすめです。

マニキュア

ばあちゃんの徘徊が止まらず困っていた時期、ちょっとイタズラするつもりでばあちゃんの爪にピンクのマニキュアを塗ってみると、ばあちゃんの女心を刺激したのか、指を広げたまま乾くのをじっと待ってくれるようになり、日中の徘徊が落ち着いて驚きました。そのうち爪が伸びてきて、除光液で落とそうとすると、今度は「せこちゃん、せこちゃん、なんで赤いの取るの?」と言うようになり、それからマニキュアがやめられなくなりました(笑)。
車いすに乗ってマニキュアをしているおばあちゃんが珍しいのか、会う人ごとに「わあ、かわいい!」とほめられます。すると、ばあちゃんも「見てください!」と言わんばかりに手を差し出して自分の爪を見せるようになって、とてもうれしそう。女性って、やっぱりいくつになってもきれいでいたいんですね。
病院の待合室でもよく声をかけられ、いいコミュニケーションツールになっています。

明るい色の服

もともとは、汚れても気にならない地味な色、家で洗濯しやすい素材を選んでいました。
身内の一人が毎年イギリスで開催されるチェルシーフラワーショーの庭園内でエリザベス女王に間近でお目にかかる機会がありました。
英国・エリザベス女王の鮮やかなカラーファッションを見てその若々しさに感動したそうです。
通訳さんによれば、長年女王陛下についていたスタイリストが20代の女性に変わってからファッションに大きな変化があったそうです。
それを聞いた私は、 ばあちゃんも女王さまにあやかろうと、赤やピンク、黄色といったあでやかな色を選ぶようになり、デイサービスでも「おしゃれなおばあちゃん」と呼ばれるようになりました。服の色で顔の表情も明るく見えるのでしょうか?いただくお手紙にも「いつもおしゃれなハツヨさん」と書かれたり。それで私も「もっとがんばってばあちゃんをかわいくしよう!」と思うようになりました。
寝たきりになってからは、パジャマや身近に置くタオル、寝具も意識して明るい色にしています。

身体の変化に応じて借りた方がいいもの

  • 車いすはこう変化する!変化の流れ
  • 介護ベッドはこう変化する!変化の流れ

車いすはこう変化する!

いずれの車いすも、介護保険を利用すれば月額数百円でレンタルできるので、経済的です。体の状況が変化しても、レンタルなら気軽に借り換えができますし、メンテナンスもお任せできます。

介護ベッドはこう変化する!

介護ベッドも車いすと同様、体の状況が変化しても、レンタルなら気軽に借り換えできますし、故障の際のメンテナンスもお任せできるので安心です。介護保険を利用すれば、月額千円ちょっとでレンタルできます。

1日の流れ

AM6:00

朝一番に呼吸を確認します

普通に生活している人が聞くと「え?」と思うかもしれませんが、ばあちゃんは苦しくても意思の伝達ができないため、私が起きると、すぐに胸とお腹の動きを見て、普段通り息をしているか確認します。
次に、血液中酸素濃度がはかれる器械(酸素濃度測定機)を人さし指にはめ、酸素濃度が足りているかどうか確認します。正常値は90~95%で、ばあちゃんの場合、痰が絡んで酸素の取り込みが悪くなると90%を切ってしまうので、そのときは、吸引器を使ってのどや鼻から痰を取ります。痰がきちんと取れると、酸素濃度がすぐに正常値に戻るので、数値を確認しますが、のどがまだゴロゴロ鳴っていないか、自分の耳でも確認します。それから、おでこに手を当て、熱がないかもチェックします。

AM6:15

朝食(流動食)は湯煎します

食事の前に漢方薬をろう孔から注入します。腸ろうの管は65cmと長い上に細く、そのまま入れると管が詰まってしまうので、計量カップに20ccほどお湯を入れ、お薬の粉を溶かしてからゆっくり注入しています。
お薬を落としている間に、流動食(一食300cc)を準備します。そのまま流すこともできますが、冷たいまま入れると下痢の原因になりやすいので、真空パックから別の容器に移し替え、人肌の温かさになるまで湯煎し、それから点滴の要領でポタポタ落としていきます。
食事の時間は2時間~2時間半ほどかかります。ベッドを平らにしたままだと、逆流してしまう可能性があるので、ベッドの足のほうを12度、頭のほうを24度まで上げ、V字のような形にします。

AM6:30

食事中に顔まわりのケアをします

まずは口腔ケア。口から食事はとらなくても、痰や唾液のカスが舌にたまってしまうので、口腔ケア用の舌ブラシを使って、ボコボコがなくなるまで、けれども舌を傷つけないように無理せず汚れを落とし、ウェットティッシュできれいに拭き取ります。今は総入れ歯なので、かえってケアは楽になりました。歯ぐきを柔らかい毛先の歯ブラシでやさしく磨いてあげることもあります。
次に、あたたかいタオルで顔を拭き、さっぱりしたあと、海外のお土産でもらったいい香りのするクリームを塗ってあげます。
いつも心がけているのは、一つひとつの動作をするとき、必ず声をかけることです。
「ばあちゃん、お口開けて~」「ばあちゃん、あったかいタオルのせるよ~」と声をかけてからお世話すると、ばあちゃんも安心して身を任せてくれます。

AM9:00

聴診器でお腹の状態を確認します

朝食が終わっても30分くらいは安静にしないといけません。ベッドの角度はそのままで、ちょっと休んでもらいます。
その後、ベッドを平らにして、聴診器をお腹に当てて腸の動きを音で確認します。お腹がぺちゃんこで、ゴロゴロと水道の配管を水が流れるような音がすればお腹の動きがいい証拠です。もともと便秘症の上に、年齢とともに腸の動きが弱くなっているので、音がまったく聞こえないときはお腹のマッサージをして外から腸を動かします。10分ほどゆっくりマッサージしたあと、もう一度、聴診器を当てると音が聞こえてきます。
音が聞こえても、お腹がはっているときは、ガスがたまっているあらわれです。
放っておくと胃液や唾液が口に向かって逆流してしまうので、私がお尻に指を入れてガスを抜くようにしています。
そこに気づいてから、痰の絡まる回数もずいぶん減りました。反対に、痰が絡んできたなと思ったときも、すぐお腹を見るようにしています。

AM10:30

毎週火・金曜日は坐薬を投与します

10時半~11時ぐらいの間に、今度はお昼の流動食を朝と同じ手順で準備します。
毎週火曜日と金曜日は、昼食の前に便秘用の座薬を挿入。ばあちゃんは昔から便秘症で、薬(下剤)の力を借りないとお通じがなかったので、お医者さんと相談して、訪問リハビリなどのサービスと重ならない火曜日と金曜日を排泄日にしようと決めました。また、スムーズな排泄を促すため、毎週月・木曜日には夕食後に落とす白湯に下剤を13滴入れています。
ばあちゃんの場合、お薬を入れてから便が出てくるまでに約3時間かかるので、その間を食事と安静の時間に当てます。朝と同じように、ベッドの足のほうを12度、頭のほうを24度まで上げ、体に負担がかからないようにして流動食を落とします。

PM1:00

毎週水曜日はリハビリの日です

週に一度、毎週水曜日のこの時間にはリハビリの先生がきてくれます。車いすに座った状態で、関節を動かしてもらったり、首から全身をマッサージしてもらったりして、40分ほどかけてゆっくり体をほぐしてもらいます。
それ以外、特別なリハビリはやっていませんが、ずっと寝たままだと体がカチカチにかたまってしまうので、日に何度か両手を持ち上げ、バンザイするような感じで伸びをしています。体がかたくなると、入浴や排せつ、着替えなどもそれだけ大変になります。こまめに体を動かすことで、少しでも硬直が防げるのではないかと思います。

PM2:00

摘便には介護者のふんばりが必要です

ばあちゃんは自力で便を出すことができなくなってしまったので、“摘便”といって、介護者がお尻に指を入れて便をかき出す動作を行います。病院なら二人体制で、一人が体を支え、一人が摘便をするのですが、私は一人なので、ばあちゃんの体を横向きにし、全体重を私の腰で支えて倒れないようにして、空いた手で便をかき出します。これはかなりの重労働で、すっかり腰痛持ちになってしまいましたが、週に一度、カイロプラティックに通い始めてからはだいぶ楽になりました。
また、出てきた便の状態によって、体調も判断します。毎日同じように流動食を入れているのに、その日によって便がコロコロしていたり、柔らかかったり、下痢っぽかったり。その違いは水分量だということが長年の介護でわかってきました。たとえば、便が固いときは室温が高く、体の水分が取られていることが多いので、その場合は水分を多めに補給したり、室温を下げたりして部屋の環境を管理します。部屋に置いている温度・湿度計の数字も目安にしながら、冬は加湿器を使うなど乾燥しないように気をつけています。

PM2:30

排便後のシャワーは時間との勝負です

排便が終わると、そのままシャワー浴をします。着ているものを脱がせて裸にし、毛布をかけた状態で休んでもらっている間に、急いで準備に取りかかります。
まず、タオル、ドライヤー、腸ろうの管の交換のためのガーゼとテープ、新しいパジャマを用意します。次に、車いすにバスローブ、バスタオルの順番で広げ、ばあちゃんをベッドから車いすに移して、体が冷えないようにバスローブでくるみます。そして、空いたベッドのシーツを交換します。
すべての準備が整ったら、車いすを押してトイレに行き、尿バックに溜まった尿を破棄してからお風呂場へ。ひじかけのついたシャワーチェアに移動して、座った状態のまま、手・足は特にアカが溜まりやすいので念入りに洗い、体や髪をきれいに洗います。
※冬の寒い時期は、あらかじめ脱衣所、お風呂場にファンヒーターを置き、部屋を暖めておきます。

PM3:00

ボディケアで気をつけるのは肌の乾燥です

シャワーがすんだら、また車いすに移動し、ドライヤーで髪の毛を乾かして肌着を着せ、それからベッドに横になります。
次に、足元だけ毛布をかけ、腸ろうが入っている管の入り口をティッシュできれいにし、ワセリンを塗って、ガーゼとテープを交換します。そして、いい香りのするボディクリームを全身に塗って、洗いたてのパジャマに着替え、また車いすに移動します。そこまでで約30分かかります。
気をつけているのは皮膚の乾燥です。特にお尻は床ずれの起きやすい場所でもあるので、病院で処方していただいた白色ワセリン(保湿剤)を塗っています。
ちなみに、パジャマは上下がつながっているオールインワンタイプ。理由は、日に何度も聴診器を当てるので、つなぎのパジャマだとパンツの上げ下げが不要になるからです。逆に上下に分かれたパジャマだと、パンツの上げ下げをするたび左右に何度も横向きにしなければならず、体力を消耗し、寝たきりのばあちゃんには負担になってしまいます。
また、脱ぎ着しやすいようパジャマはワンサイズ上のものを使っています。

PM3:30

隔週水曜日は訪問看護の日です

2週間に1度、水曜日のこの時間には訪問看護師さんがきてくれます。
ベッドに横になり、体温、血圧測定をしてもらい、腹部、胸部に聴診器を当てて、異状がないか確認。また、床ずれができてないかなど皮膚の状態も確認していただきます。
確認後、フォーレ(カテーテルと尿バッグ)を交換。ばあちゃんの場合、尿に浮遊物(尿中にカスのような物)が多く、尿道に入っているカテーテルが詰まりやすいため、2週間に1度は交換が必要です。
訪問看護師さんは、医療的処置や管理だけでなく、療養上の相談にも乗っていただける、介護される側、介護する側の心理的サポート役。
いつも的確にわかりやすく教えていただき、ばあちゃんにとっても私にとってもなくてはならない存在です。

PM4:00

夕食は車いすでとります

ボディケアが終わったら夕食の時間です。いつも寝てばかりだと身体に熱がこもり、身体の熱で水分も取られてしまいます。気分を変える意味でも夕食は車いすでとるようにしています。
ベッドから再び車いすに移動し、湯煎しておいた夕食を落とします。

PM7:00

お休み前の水分補給をします

食後、30分休憩したらベッドに戻り、夜の水分補給を行います。
ばあちゃんの場合、口からは飲めないので、食事と同じく点滴の要領でゆっくりポタポタ落としていきます。
白湯でもいいのですが、それではちょっと味気ないので、水分とイオンを効率よく補給できるフルーツ味の機能性ドリンクを、冬は150cc、夏は200cc湯煎して、1時間半~2時間かけて落とします。冬場は夜だけですが、夏場は汗の様子や体温を見ながら、日中100cc程度補給することもあります。

PM10:00

手足がむくまない姿勢をつくり、就寝です

水分補給が終わり、30分休んだら、ベッドを平らに戻して寝る準備をします。
まず、パジャマがよれないように背中のしわを引っぱってまっすぐにし、床ずれの原因にならないようにします。次に、頭の高さを12度にします。ばあちゃんの場合、飲み込みが悪く、自分の唾液でむせてしまうことがあるからです。頭や首の位置、角度が低くならないように気をつけています。
それからバスタオルを固めにクルクル巻いて脇の下からひじ下に置き、お腹に柔らかめのクッションをのせて、その上に手をのせます。このように手の位置を高くすることで、手のむくみが少ないように感じています。
寝る前には、ばあちゃんの耳元で「せこちゃんのばあちゃんでいてくれてありがとう。今日も元気でいてくれてありがとう。長生きしてね」と、おまじないのように声をかけて、私もばあちゃんの隣に布団を敷いて休みます。

寝たきり状態で意思表示ができないおばあちゃんの、日々の体の状態を判断する方法

在宅介護の場合、介護する側の細かな観察が大切です。
私は、小さな変化を見逃さず、早めの対処をすることで
ばあちゃんの健康状態が保てると思っています。

見る

  • 顔色を見る

    朝一番で、顔が青白くないか、赤くはないかチェック。熱があるときは顔が赤い。

  • 顔の表情を見る

    毎日表情が違う。調子が良いときは顔にハリ・ツヤがあり、調子の悪そうなときはハリがなく、顔にシワが多くなる。

  • 手足のむくみはないか見る

    むくんでいないときはシワがあり、むくんでいるときはシワが消えパンパンに張っている。

  • 床ずれができてないかお尻を見る

    着替えや入浴時、床ずれのできやすいお尻の割れ目の上を見る。小指の爪ほどの大きさでも皮がむけると独特のにおいがする。

  • 穏やかに呼吸ができているか?胸の動きを見る

    調子の良いときはゆっくりスースーと呼吸している。調子の悪いときは呼吸が早く、肩で呼吸しているように見える。

  • 尿漏れがないか?見る

    オムツを広げて見ると同時に、尿バックにきちんと尿が出ているか? 尿の色は濃くないか? 尿量は多くないか? 見る。

さわる

  • 手足を触る

    寒くはないか? 暑くはないか? 手足の先を触って確認。手足が冷たければ部屋の温度が寒いと判断し、エアコンや毛布などの掛け物で調節する。

  • 鼻を触る

    鼻が冷たいときは、部屋が寒い証。逆に温かければ、室温がちょうどいいと判断する。

  • おでこ・体を触る

    熱はないか? 体温計ではなく触って判断する。おでこ、首を触り、熱いなと思ったら脇を触る。熱ければ体温計でチェック。

におう

  • 便が出ているかにおう

    布団をめくってクンクンする。便が出ているとオムツを広げなくてもにおいがする。

  • 尿漏れがないかにおう

    尿漏れするのは、主にせき込んで力んだときやフォーレに浮遊物がたまって詰まっているとき。尿漏れがあれば、布団をめくったときモワッと尿のにおいがする。

聞く

  • 聴診器でお腹の音を聞く

    腸は長いので、お腹の中心・上・下・右・左と聞き分ける。パイプの中を水が流れているような音が聞こえているときは腸が活動している。聞こえないときは腸が活動していないので、お腹のマッサージを始める。

  • 聴診器で胸の音を聞く

    痰が絡んでいないときはスースーと静かだが、痰が絡んでると喉がゴロゴロしたり、胸のあたりがゼイゼイし、ひどいときは痰でうがいしているような状態になる。

ばあちゃんの調子が悪いときの解決の手順

体の調子が悪いとき、ばあちゃんは必ず異常を知らせるサインをくれます。
普段と様子が違うと思ったら、時間を置かずに行動するのが
事態を悪くさせない秘訣だと思います。
あくまでうちのばあちゃんの場合ですが、よろしければ参考にしてください。

  1. 事例1
    オムツにたっぷりと尿漏れがあるときは、
    フォーレ(尿の管)に異常があるときです。
    解決方法
    尿漏れが多いな・・・と思ったら

    通常、管の先端がバルーンのようにふくらんで膀胱から抜けないようになっているのですが(バルーンをふくらませるために滅菌精製水を入れてあります)何らかの異常でバルーンの水が減っていたり、フォーレの不良でうまくふくらまず歪な形になっていると、おしっこが脇からもれてしまいます。訪問看護師さんに連絡をして、異常がないか診ていただきます。

  2. 事例2
    尿漏れがあり、尿の色が濃くにおいがキツイときは、
    尿路感染の前兆だったりします。
    解決方法
    尿漏れがありにおいがキツイな・・・と思ったら

    常時フォーレをつけていると、尿路感染症など合併症のリスクが上がるといわれています。うちのばあちゃんの場合は尿に浮遊物が多くフォーレが詰まりやすいので、2週間に1度交換してもらっていますが、尿漏れしていて、においがキツく、色が乳白色、熱もあるというときは感染症を疑い、速やかに病院に連れて行き、異常がないか検査してもらいます。
    また、ばあちゃんの場合は尿漏れと同時に痰の絡み、唾液の分泌異常もあることが多いので、そちらもしっかりチェックします。


  3. 痰の絡みが多く、ゴロゴロし咳き込むときは、お尻の穴のところまで
    便が下りてきているのに自分で出せず、ガスが溜まっているときです。
    事例3
    解決方法
    痰の絡みが多いな・・・と思ったら

    手袋を着用し、アネトカインゼリー(粘滑・表面麻酔剤)を右手の人差し指につけてお尻に指を入れます。すると、だいたい便やガスが指に触れます。便やガスが確認できたら、浣腸を軽く湯煎し、半分くらい注入します。
    5分~10分すると自然にガスが抜ける音(オナラ)がします(音がしない場合もあります)。
    5分~10分したら、アネトカインゼリーをもう一度右手の人差し指につけ、お尻に指を入れて、下りてきた便を掘り出します。※便の状態は、パサパサした紙粘土のような水分の抜けた便だったり、ビー玉や栗くらいの大きさの水分の抜けたコロコロした便だったり、日によって色や形や硬さはさまざまです。
    便もガスも出るとお腹の張りもなくなり、不思議と痰の絡みが落ち着きます。

  4. 事例4
    便やガスの詰まりはなく、痰の絡みがひどいときは、どこかしら体の
    調子が悪い証拠です。痰と一緒に、吸引しきれないくらい唾液の分泌が多くなります。
    解決方法
    お腹の張りはなく、痰の絡みがひどい、唾液の分泌が異常に多い・・・と思ったら

    ばあちゃんは、自分から「痛い」「かゆい」などの意思表示をすることができません。速やかに病院へ連れて行き、異常がないか、血液・胸部・腹部レントゲン検査をしてもらいます。

  5. 事例5
    痰の絡みがなく、お腹が張る(触った感じはバランスボール)ときは
    ガスが溜まっているときです。
    解決方法
    バランスボールのようにお腹が張っているな・・・と思ったら

    「の」の字を描くように、お腹の中心から両サイド(腸の曲がり角辺り)をマッサージします。マッサージしていくと、だんだん腹部右下に握りこぶしくらいのポコンとしたふくらみができます。ここにガスが溜まっています。
    右下腹部がポコンとしてきたら、体を横向きにして、右手の人差し指にアネトカインゼリーをつけ、お尻に指を入れながら左手でお腹を押しつつ、ガス抜きをします。
    それでもガスが抜けないときは、浣腸を軽く湯煎して半分くらい注入し、自然にガスが抜けるのを待ちます。
    ガスが抜けてくれると、バランスボールのようにパンパンだったお腹は風船を触ってるような柔らかさになります。