ひと言で「寝たきり」といっても、一人ひとり体の状態は違います。私のおばあちゃんは胃ろうから腸ろうに切り替え、1日3回の流動食をとっていて、着替えはもちろん、排せつ、寝返り、すべて介助が必要です。目もほぼ閉じたままで会話はできません。必ずしも、みなさんに役立つ情報ではないかもしれませんが、あくまで「うちのばあちゃんの場合」ということで、介護のポイントや朝から晩までの介護の流れを紹介します。
7年半ほど前のこと。朝、いくら呼びかけてもばあちゃんの反応がなく、あわてて救急車を呼びました。救急隊員さんが酸素濃度をはかると、数値がとても低かった。どうやら痰がつまって酸素が取り込めなくなっていたようです。救急車のなかで、鼻から酸素を入れるとすぐに意識は回復しましたが、それまではこちらのほうが生きた心地がしませんでした。
そのまましばらく入院した際、看護師さんとも相談して
「自宅に酸素濃度測定器があったほうがいいね」ということ
になり、痰の吸引器とセットで購入しました。
うちでは毎朝、酸素濃度をはかっていますが、ばあちゃんの場合、酸素濃度が90%を切ると痰が絡んでいる合図。すぐに吸引器で痰をきれいに吸い取ります。すると、酸素濃度もあっという間に正常値に戻るので、目で確認できて安心です。
酸素濃度測定器は、濃度と脈拍さえわかれば安いものでいいと思います。私は訪問看護師さんにお願いして購入しました。値段は3万円弱くらいだったと思います。
「酸素濃度測定器を買った理由」でも書いたように、酸素濃度測定器と痰の吸引器はセットで購入しました。
最初はやはり怖かったです。看護師さんに教えてもらってもなかなかコツがつかめず、鼻の粘膜を傷つけて鼻血を出したり、のど仏に当たったり。でも、回数をこなすうち、耳と勘を頼りにうまく吸引できるようになりました。ばあちゃんの体の形状に慣れてきたのかもしれません(笑)。管はまっすぐ入れるより、先をクルクル回転させながら入れてあげると、痰の吸い付きがいいように感じます。
今は、寝る前に吸引するようになったせいか、夜中に何度も
せき込むことがなくなり、吸引の回数もずいぶん減って楽になりました。
そのまましばらく入院した際、看護師さんとも相談して
「自宅に酸素濃度測定器があったほうがいいね」ということになり、
痰の吸引器とセットで購入しました。
吸引器はつねにベッドサイドに準備しています。いつでも使えるよう、容器に水を張り、哺乳瓶を消毒する液(私はミルトンを使っています)を2滴入れて、管を浸けっぱなしにしておきます。管のサイズは病院で使うものより細いほうが便利だと思います。口から取りにくいときは鼻から取るなど、細いほうが応用がききますから。管は一週間に1回、新しいものと交換しています。
値段は4万円弱くらいで、これも訪問看護師さんにお願いして購入しました。管の交換も含めるとコストはそれなりにかかりますが、在宅で介護する以上、この出費は仕方ないと思っています。
2年前に腸閉そくを起こして入院したとき、病院で一日何度も看護師さんがばあちゃんのお腹の音を聴きにきて、腸が正常に動いているか確認していたのを見て、私も「家で使おう」と買うことにしました。インターネットで探して、2,000円ぐらいだったと思います。
そのまましばらく入院した際、看護師さんとも相談して
「自宅に酸素濃度測定器があったほうがいいね」ということになり、
痰の吸引器とセットで購入しました。
ばあちゃんはもともと便秘症のうえに、年齢とともに腸の動きが弱くなっています。流動食のあと、聴診器を当てても、音がまったく聞こえないこともあります。
そういうときは、お腹をマッサージします。腸の曲がっているところに便がたまりやすいので、お腹の両脇をやさしく刺激するようにもみ、次にお腹全体を「の」の字を描くように10分ぐらいゆっくりマッサージしたあと、再び聴診器で聴くと、腸がグルグル動きだしたのがわかります。
皮膚の乾燥を防ぐため、お風呂上がりにはいつもボディクリームを塗っています。
たまたま海外のお土産でいただいたボディクリームを塗ってみたところ、ばあちゃんが甘い香りに包まれて、二人ともとても幸せな気持ちになりました。
入院中は、看護師さんたちが「ここのお部屋いい香りがする~」と言いながら入ってきます。デイサービスを利用しているときも、職員さんが「いい香りがする~」と言いながらばあちゃんのまわりをクンクンしていました(笑)。
介護にはにおいの悩みがつきものですが、いい香りのボディクリームを使ってみるのもひとつの方法だと思います。
入院した際、個室であれば、アロマポットやディフューザー(香りを部屋に拡散させる器具)などを持ち込むのもおすすめです。
ばあちゃんの徘徊が止まらず困っていた時期、ちょっとイタズラするつもりでばあちゃんの爪にピンクのマニキュアを塗ってみると、ばあちゃんの女心を刺激したのか、指を広げたまま乾くのをじっと待ってくれるようになり、日中の徘徊が落ち着いて驚きました。そのうち爪が伸びてきて、除光液で落とそうとすると、今度は「せこちゃん、せこちゃん、なんで赤いの取るの?」と言うようになり、それからマニキュアがやめられなくなりました(笑)。
車いすに乗ってマニキュアをしているおばあちゃんが珍しいのか、会う人ごとに「わあ、かわいい!」とほめられます。すると、ばあちゃんも「見てください!」と言わんばかりに手を差し出して自分の爪を見せるようになって、とてもうれしそう。女性って、やっぱりいくつになってもきれいでいたいんですね。
病院の待合室でもよく声をかけられ、いいコミュニケーションツールになっています。
もともとは、汚れても気にならない地味な色、家で洗濯しやすい素材を選んでいました。
身内の一人が毎年イギリスで開催されるチェルシーフラワーショーの庭園内でエリザベス女王に間近でお目にかかる機会がありました。
英国・エリザベス女王の鮮やかなカラーファッションを見てその若々しさに感動したそうです。
通訳さんによれば、長年女王陛下についていたスタイリストが20代の女性に変わってからファッションに大きな変化があったそうです。
それを聞いた私は、 ばあちゃんも女王さまにあやかろうと、赤やピンク、黄色といったあでやかな色を選ぶようになり、デイサービスでも「おしゃれなおばあちゃん」と呼ばれるようになりました。服の色で顔の表情も明るく見えるのでしょうか?いただくお手紙にも「いつもおしゃれなハツヨさん」と書かれたり。それで私も「もっとがんばってばあちゃんをかわいくしよう!」と思うようになりました。
寝たきりになってからは、パジャマや身近に置くタオル、寝具も意識して明るい色にしています。